建物のライフサイクルコストを考える = 長期修繕計画
目的 余分な費用を使わずに、マンションを効率的に運用していく為の計画
1⃣将来的に実施される修繕工事や改修工事の内容と大体の時期概算費用等をはっきりさせる。
2⃣計画的修繕工事のための修繕積立金額の根拠をはっきりとさせ、見直しの検討を行う。
3⃣長期的な修繕工事や改修工事の計画について予め合意しておき、計画的な修繕工事の実施を円滑にする。
■長期修繕計画のメリット
マンションの資産価値を維持し、住みやすい状態を保つためには10年~15年のスパンで大規模修繕工事を実施する必要があります。
長期修繕計画は、こうした大規模修繕工事を、「いつ」、「どこの部分を」、「どのように」、修繕するかを計画することをいいます。
修繕計画を計画的に行うことで、建物の劣化による日常生活への影響を防ぎ、無駄な工事を排除できるほか、以下の様なメリットが考えられます。
※見直しのタイミングは5年程度ごとに調査・診断を行い、その結果に基づいて見直します。
■管理組合様へ
建物の資産価値を下げないためにも長期修繕計画の見直しを定期的に行い、皆様が住みやすいマンションを維持・改善することが大切です。
まだ長期修繕計画を作成していない又は計画を見直したいという思いがありましたら住商産業が作成するお手伝いをさせていただきます。また、長期修繕計画に関することで気になることやご相談も無料で受付けておりますのお気軽にお問合せ下さい。
マンション・建物を長持ちさせるには
マンションなどの建築物の費用を考えるとき、建築の費用のみを考えて評価しがちになりますが、建築費は建築物のライフサイクルコスト(生涯費用)においては氷山の一角に当たります。
図のように水面下にはビル管理費、修繕費、更新費、光熱費、一般管理費等の費用も同時に含めなければ本当の意味での建築物費用の検討をしたことにはなりません。
運用管理は思っている以上に費用がかかり、建設費の5倍にも達することがあるほどです。
鉄筋コンクリートで造られた頑強に見えるマンションでも年数を経て、建物の各部「屋上防水」「外壁塗装」「鉄部塗装」および付帯設備(受水槽・ポンプ・エレベーター等)の劣化が顕在化してきます。
鉄筋コンクリート造の耐用年数は法人税法、所得税法に基づく「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」の規定には47年と言われています。
コンクリートの中性化がコンクリート内部の主要鉄筋に達する年限は60年との説もありますが、一様では必ずしもありません。十分な保全処置が必要となります。
自然環境などの影響を受け、建物は徐々に現状から性能低下を起こしていきます。「補修」とは性能を実用上支障の無い水準まで戻す作業のことで、「修繕」とは初期のものに回復させることを言います。
また、「改良」とは初期の水準以上のものに仕上げ、快適性や利便性の向上を図ることで、「改修」とは「修繕」と「改良」を同時に行うことを言います。
事前に長期的な改修計画を立てて、時代に合わせたり環境に適した「改修」を推し進めることは、資産価値の向上に繋がります。
劣化した外部塗装を放置すると美観を損なうだけではなく、コンクリートが乾燥収縮により生じる亀裂からの雨水侵入、コンクリートが空気中の炭酸ガスによって、中性化し、耐用年数を減少させることになります。
また、付帯設備(受水槽・ポンプ・エレベーター等)が劣化するとマンションの生活に直結していますので、断水や停電などの生活機能に障害が起こり、緊急対応を強いられ、費用の増加と生活自体の停止を招く事になります。
この事態を予防し防ぐには、マンションの資産価値を保全して、快適なマンション生活を継続させることが大事です。
適切な修繕を行わずに放置してしまうと、数年後に数倍の費用負担が強いられることにもなりかねません。
マンションの資産価値を保全していくには、長期的な展望のもとに修繕時期、工事内容、費用を検討して、修繕計画を立案し、修繕費用を着実に積立ておくことが重要です。
こういった準備は怠ってしまうと、修繕の時期に居住者の負担金が発生して、工事内容や自己都合による優先順位を説得が必要になったり、長期不在者への連絡や年金生活者などの経済的な事情を抱える方への対処、居住者の合意・協力に費やす労力と時間が必要となってきます。
そうなると全員の協力も難しくなってきます。こんな事態に陥らないためには、早期から管理組合の中に専門委員会を発足させ、充分な内容の検討をして長期修繕計画をたて、全員から無理ない合意を得ることが必要となってきます。
長期の修繕計画は、過去の統計を基に修繕の周期と改修方法および費用を算定しています。
しかし建物は立地の条件や周辺環境、各建物が持つ特性によって劣化の状況が違ってきます。
新しい材料、工法により耐久性の増加だったり、コストダウンや物価変動、消費税率の変化など、多岐に渡る要因があるために、定期的な建物の点検や診断によって、適切な修繕計画の修正、それに伴う積立金の変更を実施した上でより確実な修繕計画の遂行が望ましいです。
修繕積立金の明示
中古マンションを転売する時には宅地建物取引業法により、購入者が不利益にならないように重要事項説明書のなかに修繕積立金額残高を記載することが義務付けられています。
修繕積立金額残高が適正であれば、有利な転売条件となります。